今日の昼は千吉という讃岐うどん屋に行ってみた。千吉は 3 日ほど前に知ったばかりなのだが、私がこの店に興味を持ったのは、かき揚天うどんというメニューがあったからだ。普通のうどん屋だと、海老の天ぷらうどんしかないのに、かき揚天うどんがあることが気に入った。かき揚天うどんは単品で 380 円。120 円プラスすると定食になるとのことだったので、かき揚天うどん定食を注文した。あさりご飯、小鉢一品、ポテトサラダ、漬物がついて 500 円の定食はお得感たっぷりである。
天ぷらうどん、天丼、天ぷらそば、天むす、天ぷら定食。だれが決めたのか知らないが、天ぷらと言えば海老の天ぷらを指す。私は天ぷらそのものは大好きなのだが、海老は大の苦手なのだ。常日頃、海老天以外の天ぷらうどんや天丼を食べたいと思っているのだが、一般的な店、特に高級な店では、海老天以外の「天」は残念ながらなかなかお目にかかれない。
私は物心付いたときから海老が嫌いだった。人から理由を聞かれたら、「後ろ向きにしか進まないネガティブな姿勢が嫌い」と答えているのだが、本当のことを言うと、何とも言えない変な弾力の中に、おれは海老様だぞという主張が全面的に盛り込まれている感じがどうも苦手なわけで(意味不明な説明ですね)。
そういうわけで、私は常に海老を避ける生活をしているわけだが、どうしても海老を避けられない事態に陥ったことがあった。その事件は、大学卒業後に初めて就職した会社で香港に出張したときに起こった。毎晩、わが社の香港代理店の人が美味しいものを食べさてくれ、初めて行った香港で食べる本場の広東料理の美味しさに感動していた。香港滞在の最終日は、「夜は美味しいものを食べさせてやるから楽しみにしててくれ」と代理店の S 氏が何度も言っていたので、私もその日の晩ごはんを楽しみにしていた。
仕事を終えて代理店の接待ディナーが始まった。代理店の S 氏は、「今夜はスペシャルしゃぶしゃぶだ」と言って張り切っている。日本にもこんな豪華なしゃぶしゃぶはないはずだと興奮気味に言う。しばらくして、私たちにテーブルにスペシャルしゃぶしゃぶが運ばれてきた。それを見て私は卒倒しそうになった。生きた海老が串に 10 尾ほど刺さっているのである。1 人前 10 串ほどあるだろうか。この串を、肉のしゃぶしゃぶみたいに湯にしゃぶしゃぶして食べろと言うのだ。大ピンチだ。しかし、私に喜んでもらおうと思って朝から張り切っている S 氏に、「海老は苦手だ」などと言えるほど私は人でなしではない。とんねるずの食わず嫌い王決定戦を凌ぐ演技で、美味しそうに(自分ではそのつもり)スペシャル海老しゃぶしゃぶを完食した。おかげで、どうにか人でなしにならずに済んだが、今思い出しても苦しくなる体験だった。
海老が嫌いだと蟹も嫌いなんだろうと思われがちであるが、蟹は好きだ。人は変だと言うが、私にとっては鶏肉と牛肉がまったく別物であるように、海老と蟹もまったくの別物である。さらに、海老せんべいが大好きだと言うと、ますます変だといわれる。子どものころは、坂角の海老煎餅ゆかりが大好きだったし、今でも揚げたての香ばしい香りがする海老せんべいは大好物である。海老せんべいの原料は、本当に海老なんだろうか。海老があんな美味いせんべいになるなんて、どうしても信じられない。