[本] カテゴリー

本に関する雑談


最近のマイブームは「あらすじ名作劇場」

 最近のマイブームはBS朝日で毎週水曜日の22:00から放送している『あらすじ名作劇場』。洋の東西を問わず、名作と呼ばれている作品をすべて現代の日本を舞台としたドラマとして再現し、あらすじを簡単に紹介してしまおうという番組である。『イワンのバカ』や『車輪の下』など外国の名作から、『竹取物語』、『曽根崎心中』、『坊ちゃん』といった日本文学や「猫の皿」といった落語にいたるまで、ありとあらゆる名作が現代の日本を舞台としたストーリーとして紹介される。

 中には、現代の日本の話に変えてしまうのは無茶だろうと感じるものもあるが、それでもだいたいどんな話なのかを知ることができて楽しい。先週の放送で取り上げられていたのは清少納言の『枕草子』。学校で必ず習う、「春はあけぼの」で始まる古典の代表作である。学生の時に習ったっきりなので、内容はよく覚えていなかったのだが、『枕草子』は現代で言うなら若い女性の日常について書かれたブログのようなものだとのこと。冒頭の四季について綴った部分以外に、「男という生き物は」「人間関係あるある」「心がときめく好きな物あれこれ」といったさまざまなテーマについて書かれたものであることがわかった。その中でちょっとおもしろいと思った一節を紹介する。

めったにないもの。

舅にほめられる婿。
また、姑にほめられるお嫁さん。
主人の悪口を言わない使用人。
全然欠点のない人。
顔立ち、心、ふるまいもすぐれていて、
ずっと世間で人付き合いをしてきて
ほんの少しの非難も受けない人。
男と女とはいうまい、
女同士でも、関係が深くて親しくしている人で、
最後まで仲が良いことはめったにない。

体裁が悪いもの。

他の人を呼んだのに、自分かと思って出てしまった時。

 これを見ると、1,000年前の女性も、考えていることは現代の女性とほとんど変わらない。人間なんて、本質的には1,000年前からほとんど進歩していないのかもしれない。『枕草子』。おもしろそうだ。原文の古文で読むのはちょっとつらいので、『枕草子』を現代語訳で読んでみたくなった。

俳句熱再び(自選57句)

 俳句を始めて4年になる。昨年の秋ごろからしばらく俳句熱も冷めていたのだが、同業者のある人から勧められた本(漫画)を読んで俳句熱が再燃した。『あかぼし俳句帳』という俳句をテーマにした漫画である。窓際に追いやられたとある中年のサラリーマンがひょんなことから俳句と出会い、俳句の世界にのめり込んでいく物語。

 あと、別の同業者の方から『芸人と俳人』という本も教えてもらった。芥川賞作家の又吉 直樹さんが、俳人の堀本裕樹さんの指導の下、俳句を勉強していくという内容の本である。この2つの本を読んでいるうちにまた猛烈に俳句が詠みたくなって、この3月からせっせと俳句を詠んでいる次第である。

 この機会に、過去4年間で自分が詠んだ句を振り返ってみた(拙句は「ハイ!句にしろ!」で公開しています)。詠んだ句の総数は446句。その中で自分のお気に入り9句を自選してみた(「NHK俳句」の入選句の数が9であるため、それに倣った)。一次候補で選んだ句が57句。それぞれに思い入れがあったので、そこから9句に絞るのは大変だったが、悩んだあげく以下の9句を選んでツイートした。

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『モンスター』は怖くて悲しい話でした

 百田尚樹さんの『モンスター』を読み終える。この小説を読みたいと思ったのは、MBSラジオ「ありがとう浜村淳です」の映画サロンで紹介された映画『モンスター』のストーリーがあまりにもおもしろそうだったからである。

 『モンスター』の主人公はあまりにも醜く不細工だったため、子どものころ「化け物」「モンスター」と呼ばれていた。その主人公が整形手術を繰り返し、誰もが見とれるような絶世の美女に生まれ変わって生まれ故郷の町に帰って来るところから話は始まる。主人公が子どものころどれほどつらい思いをしたか、そして美しくなるためにどれほどの努力をしたかが回想形式で綴られており、あまりにもの壮絶さに胸が苦しくなる。とっても怖くて悲しい話だった。

 浜村さんの「聴く映画」(浜村さんの映画サロンのコーナーは、まるで映画を「聴いて」いるような臨場感で映画の世界に入り込んでしまうので、私は勝手に「聴く映画」と呼んでいる)で聴いたとおりに、ゾクゾクするようなおもしろさで、あっという間に読み終えてしまった。男の私には女性の気持ちはよくわからないのだが、そして整形を否定するわけではないのだが、そこまで美しさを追求しなくも、ほどほどでいいんじゃないのと思ってしまう。『モンスター』は男性も女性も興味深く読める小説だと思う。お勧めです。

 百田さんと言えば、現在公開中の映画『永遠の0』が大評判だ。「ここ数年観た映画の中でいちばん感動した」と言っていた人もいた。映画を観る前に原作を読んでみたいのだが、なかなか読む時間がないため、読み終わるころには劇場公開が終わってしまいそうだ。読んでから観るか、観てから読むか。悩ましいところである。

 余談だが、百田さんは現在川西市在住とのこと。同じ川西市に住むものとして、今後百田さんの作品をいろいろ読破していきたいなあと思っているところです。

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マイブームは生物学(文系でも楽しく読める生物学の本)

 最近のマイブームは生物学。図書館に行ってはせっせと生物学関係の本を借りている。学生のころわりと好きだった生物学をちょっと勉強してみたくなったというのが主な理由だが、ひょっとしたら仕事の範囲が少しでも広がるかもしれないという期待も少しある。

 しかし、図書館で目を通した時にはおもしろそうだと思った本でも、読み進めるうちにだんだん難しくなってきて、私のような基礎知識がない人間にとっては退屈になってくる。基礎知識がない文系の人間でも楽しく読める生物学の本を求めて、『ぼくの生物学講義―人間を知る手がかり』という本を借りてみた。図書館でちらっと中身を覗いただけでもすごくおもしろそうだった。涼しい場所で何かを飲みながら本を読みたくなったので近くの喫茶店に入ることにした。

 この本は、清華大学で実際に行われた半年間の講義をまとめたものらしい。サブタイトルが示すように、「人間とはいかなるものか」についての、生物学の視点からの講義とのこと。第1講は、人間がいかに変な動物かについて書かれている。たとえば、哺乳類の別名「ケモノ」は「毛もの」であり、「毛の生えたもの」という意味なに、人間は唯一毛のないケモノだとか。実際に教室で講義を聞いているような感じでとてもおもしろい。

 夢中になって読んでいると、隣でひとりでアイスコーヒーを飲んでいたおじいさんのテーブルに知り合いのおじいさんがやって来た。あとからやって来たおじいさんは「わし、100歳になってタバコ止めたんや」などと得意げに言っている。元からいたおじいさんも(見たところ80歳くらいか)、「あんたえらいなあ。タバコは身体に悪いから、わしも止めんなあかんわ」などと、タバコを止めた100 歳のおじいさんのことをしきりに感心している。「100歳までそうやって健康に生きてきたんやから、いまさらタバコ止めんでもええんと違うの」と思いながらふたりのおじいさんの会話を聞いていたのだが、自分の健康や長生きすることを考えて、生活習慣を変えるのも人間だけだろうなあなどと考えていた。

 閑話休題。『ぼくの生物学講義』は、老眼が進行して最近一段と本を読むのが億劫になってきている私が一気に読んでしまうほどおもしろかった。人間という動物の生物的な観点からの特異性がよくわかった。具体的には、体毛、おっぱい、言語、遺伝子、社会、種族の維持、結婚、オスとメス、イマジネーションなどについて、人間がいかに変わっているかがわかりやすいことばで丁寧に説明されていた。ある意味、生物学の枠を超えて人間について書かれた人間学の本と呼んでもいいのかもしれない。

 あまりにもおもしろかったので、読み終えたときに「『ぼくの生物学講義』がおもしろかった」とツイートしたら、複数の方から「日高敏隆先生の本はほかにもいっぱいおもしろい本がある」というリプライをいただいた。日高先生のほかの著書もいろいろ読んでみたくなった。

ぼくの生物学講義―人間を知る手がかりぼくの生物学講義―人間を知る手がかり
日高 敏隆

人間はどこまで動物か (新潮文庫) 世界を、こんなふうに見てごらん 春の数えかた (新潮文庫) 世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫) ネコはどうしてわがままか (新潮文庫)

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つかみは OK(自己紹介のコツ)

 先日図書館でおもしろそうな本を見つけたので借りてみた。タイトルは『また会いたい!と思われる 自己紹介のルール』。近々同業者の勉強会があり、そこでちょっとした発表をする予定になっていたので、この本を読んでおくと役に立つかもしれないと思ったのだ。

 この本で紹介されていた簡単に実践できる印象に残る自己紹介のポイントは 2 つ。1 つは、名前の紹介をするときに漢字を 1 文字ずつ説明すること。たとえば、国城 鶏侍なら、「国語の国に大阪城の城で『くにしろ』、養鶏場の『鶏』に『さむらい』と書いて『けいじ』と読みます」という感じで紹介するといいらしい。もう 1 つは、自分が提供できるものを簡単に紹介すること。仕事に関することでも趣味に関することでも何でもいい。たとえばラーメンが好きな人なら「ラーメンが大好きなので大阪のラーメン屋に関することならだれよりも詳しい自信があります」でいいらしい。

 先日行われた同業者の集まりで、早速この本で覚えた自己紹介のルールに従って自己紹介をやってみた。名前と漢字を 1 文字ずつ説明したあと、「前職が眼鏡屋なので眼鏡については詳しいです。たぶん日本で唯一の眼鏡翻訳者です」とやったら、笑いが起きた。とりあえず、つかみは OK だったようである。本のタイトルどおり「また会いたい」と思ってもらえたかどうかはわからないが、また機会があれば別のパターンでやってみようと思う。

また会いたい!と思われる 自己紹介のルールまた会いたい!と思われる 自己紹介のルール
田中 省三

中経出版 2010-04-13
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ロングブレスウォーキング始めました

 40 代のころは、食事量をちょっと減らすだけで簡単に減量できていたのに、最近はがんばってもなかなか体重が落ちなくなってしまった。ウォーキングも続けているが、さほど効果を感じない。お腹のぽっこりレベルも、そろそろしきい値を超えそうな勢いで増大している。いや、もう超えているのかもしれない。

 先日 MBS ラジオを聴いていたら、俳優の美木良介氏がゲストとして登場した。映画か何かの宣伝だろうと思っていたら、ロングブレスダイエットの宣伝だった。何となく、毎日 30 分、1 時間ウォーキングしていてもほとんど効果がないが、ウォーキングにロングブレスを取り入れることによって、確実に体脂肪率が下がり身体が引き締まってくるという。 DVD が付属しているので、それを観るだけでやり方を簡単にマスターできるらしい。美木さんの話を聴いているうちに、ロングブレスダイエットにすごく興味が湧いてきた。すぐさま Amazon にアクセスして、衝動ポチリをしてしまった。

 昨日、待ちに待った『美木良介のロングブレスダイエット 必やせ最強ブレスプログラム』が届いた。DVD でロングブレスのやり方は大体理解できた。3 秒で息を吸って 7 秒で吐くのが基本のやり方らしい。ウォーキングに応用する際は、4 歩で息を吸って 8 歩で吐くとのこと。

 今朝は雲ひとつない快晴。絶好のウォーキング日和だ。昨日覚えたロングブレスウォーキングを早速試すべく、午前中からウォーキングに出かける。何となく歩くのに比べて、確かに負荷がかかっていて、消費カロリーも高いような気がする。ポイントは、ロングブレスをやっている間は常にお腹に力を入れて引っ込めた状態を維持することらしい。1 カ月も続ければ、確実に身体が引き締まってきたことが実感できるとのこと。とにかく、1 カ月続けてみることにする。身体の引き締まりや体脂肪の低下だけでなく、身体のさまざまな不具合の解消に効果があることを期待して。

419863422XDVDで完璧にわかる! 美木良介のロングブレスダイエット 必やせ最強ブレスプログラム
美木良介
徳間書店 2012-06-29

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ただいま俳句の修行中(2012 年 4 月のマイブーム)

 ここ数日初夏の陽気が続いている。室内にいると気持ちいいが、長時間外を歩くと汗が湧き出る季節になった。今日は最近のマイブームについて書く。

 まずは食べ物のマイブームから。最近気に入っているのが博多一風堂のラーメン。「まるごとく~ぽん」に割引券が掲載されていたことがきっかけで初めて行ったのが 2 週間ほど前。そのときに食べた赤丸新味というラーメンがあまりにも美味く、すっかり魅了されてしまった。3 日ほど前にも、からか麺というのを食べてみたが、これもスープをすべて飲み干したくなるほどの美味さ。わが家からはちょっと遠いので、しょっちゅうは行けないが、このマイブームはしばらく続きそうだ。

 読むもののマイブームは『マンガ 日本の歴史』。先日図書館で見つけ、とりあえず「平氏政権と後白河院政」の巻を借りて読んでみたのだが、なかなかおもしろかった。最近、明治 20 年頃からの日本の近代史を描いた現代編を読み始めたところだ。現代編を読み終えたら、本編(全 48 巻)に戻って全巻読破しようと思っている。

 学校の日本史の授業について日ごろから思っていることがある。日本史の授業では、必ず縄文時代から順を追って進めていくため、近代史を教える時間が足らなくなり、どうしてもおろそかになる。まず、近代史から教えて、そのあと古代に戻ってもいいのではないだろうか。明治ではなく、幕末から始めてもいいと思う。縄文時代の日本人がどんな暮らしをしていたかよりも、明治、大正、昭和の時代の日本人が何を考え、どんな方向に進もうとしていたかを知ることのほうがはるかにおもしろく、重要だと思う。

明治国家の経営 (マンガ 日本の歴史)明治国家の経営 (マンガ 日本の歴史)
石ノ森 章太郎

マンガ日本の歴史 (52) (中公文庫) マンガ 日本の歴史〈55〉高度成長時代 (中公文庫) マンガ 日本の歴史〈43〉ざんぎり頭で文明開化 (中公文庫) マンガ 日本の歴史〈50〉大日本帝国の成立 (中公文庫) マンガ日本の歴史 (51) (中公文庫)

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 最後のマイブームは俳句。今年の初めに掲げた目標の 1 つが俳句の勉強をすることだった。3 月くらいからいろいろな本を読んで勉強をしている。俳句の決まりごとは、五七五の 17 音で作ることと季語を入れることの 2 つだけなのだが、それらしいものを作るのはなかなか難しい。気が向いたときに作ってはツイッターに投稿している。少しはそれらしいものができたので、調子に乗って俳句のサイトを作ってしまった。サイトのタイトルは「ハイ!句にしろ!」。飽きっぽい私がいつまで続くかはわからないが、気長に続けていきたい。

 上達するには、句会や吟行に参加するのがいいらしいが、今のところそんな時間は取れないので、それは老後の楽しみに取っておくことにし、それまでは自己流でぼちぼち楽しむことにする。どうせ俳句をやるのなら、かっこいい俳号を持ちたいと思って、くにしろ 万太郎とか、くにしろ 出歩などを考えてみたが、いまいちぱっとしない。漢字を使って、国城なんとかにしようかなどと思案中。今日、カラー写真がたっぷり載っている歳時記(季語の辞書のようなもの)を買った。

オールカラー よくわかる俳句歳時記オールカラー よくわかる俳句歳時記
石 寒太

ナツメ社 2010-09-14
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日本史の勉強を始めました

 数日前から『もういちど読む山川日本史』という本を読んでいる。高校の日本史の教科書を、一般読者のために書き改めた本であり、日本史の流れを大まかに把握できるようになっている。これを読もうと思ったきっかけは、ここ数年大河ドラマを見ていて、自分の日本史の知識があまりにも欠乏していることを痛感したからである。とりあえずは、『平清盛』をもっと楽しむためにも、平安末期の大まかな時代背景を知りたいと思ったのだ。

 数日前から読み始めて、ちょうど戦国時代のあたりまで読んだ。高校時代は、国際人を目指す自分には日本史なんて必要ないと考え、受験科目には世界史を選択していた。だから、ちゃんと日本史を勉強したのは中学生のときが最後である。学生の時のように、年号を覚えたり、人名とその漢字を覚えたりする必要がないので、小説を読むかのようにどんどん読み進めることができ、歴史の流れを掴みやすい。学生の時に、こういう勉強の仕方ができれば、日本史ももっと楽しかったろうに。

 ここまで日本の歴史を読み進めてきて、へえと思ったことが 2 つあった。1 つは、元寇に関する記述である。日本が元(蒙古)に征服されなかったのは、ひとえに神風と呼ばれる台風のおかげだったと習ったような記憶があったのだが、『もういちど読む山川日本史』によると、日本の武士も相当がんばって抵抗したようである。神風は日本軍勝利の一因に過ぎないとのこと。また、最近では、この事象を元寇ではなく、「蒙古襲来」とか「モンゴル襲来」と称しているようである。

 私たちの時代とは変わっていたことがもう 1 つあった。それは『徒然草』の作者の名前だ。『もういちど読む山川日本史』では、卜部兼好(うらべけんこう)と表記されている。「かつては吉田兼好という名で教科書に登場していた」と注釈が付いている。時代が変わると、数百年前の事象まで変わってしまうんだと驚いた次第である。

 とにかく、試験がない勉強は楽しい。一生懸命覚える必要がない勉強も楽しい。私のように、日本史の知識がほとんどなく、日本の歴史を大雑把に復習したいなあと思っている人には、この本お奨めです。
 

4634590646もういちど読む山川日本史
五味 文彦 鳥海 靖
山川出版社 2009-09

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おとなに人気の伝記(スティーブ・ジョブズ)

 少し前のエントリー「こんなところでもイチロー」で、最近の子どもたちに人気がある伝記はイチローとヘレン・ケラーの伝記であることを書いたが、最近おとなの間で大人気の伝記と言えば、スティーブ・ジョブスの伝記である。私は、流行ものにはすぐに手を出さないタイプの人間であり、世間で大人気だと聞くと、逆に「流行に躍らされてなるものか」と思ってしまうへそ曲がりな面がある。これまでアップルの製品を使ったこともなく、アップルのファンということもなかったため、スティーブ・ジョブスの伝記に特には興味はなかった。

 しかし、ツイッターで、『スティーブ・ジョブス』の著者である井口耕二さんの翻訳がすばらしというツイートを何度も目にするにつれて、だんだん読みたいと思うようになる。同業者だけでなく、一般の方も「翻訳がすばらしい」と絶賛していたからだ。翻訳者を目指して修行していたころから、井口さんのことは翻訳フォーラムの主宰者 Buckeye さんとして知っていた。翻訳者の間では超有名な方である。翻訳の勉強という意味でも、やっぱり読んでおくべきだと考え直し紀伊国屋書店に走る。

 私などが、井口さんの翻訳を批評するのはおこがましいのだが、ストレスを感じることなくすいすい読める文章である。しかも、読み進めるにつれてどどんどん読みやすくなる。最近ますます老眼が進行し、本を読むのがおっくうになっている私が、上下巻合わせて 900 ページ弱の本を一気に読んでしまうほどおもしろく、にわかに、スティーブ・ジョブズのファンになってしまった。最近スマホユーザーになって喜んでスマホを使っている妻に、「そんな便利なものが使えるのも、ジョブズのおかげやで」などと言うほどだ。

 上巻(『スティーブ・ジョブズ I』)は、自分が創業したアップルをジョブズが追われるまでの話。下巻(『スティーブ・ジョブズ II』)は、ジョブスがアップルに復帰して、iMac を皮切りに、次々とヒット商品を生み出していく過程を描いている。私が PC を初めて買ったのが 1998 年。このあたりのことからはリアルタイムで知っていたので、開発の基盤となった思想や裏話は興味深かった。iMac、iPod、iPhone、iPad などで、ライバル会社をあっと言わせ、立場を逆転させていく様子を読んでいると、『難波金融伝・ミナミの帝王』の銀ちゃんこと万田銀次郎が、悪いやつらにほえ面をかかせるべく、逆襲を開始するときのような爽快感がある。

 スティーブ・ジョブズの伝記を読んで、心に残ったフレーズは「洗練を突き詰めると簡潔になる」だ。これは、IT 製品に限らず、すべてのことに当てはまることだ思う。仕事、人間関係、その他人生のもろもろのことは、何事も洗練を突き詰めると簡潔になるんだと思う。何事も難しくしてしまう私にはなかなかできないことだが。

 井口さんはご自身のブログで(『スティーブジョブズⅠ・Ⅱ』-誤訳の指摘)で、誤訳であると指摘された箇所について解説されている。こういう一流の人でも誤訳することがわかってある意味ほっとした。そして、人間誰しも自分の間違いは認めたくないものであるが、間違いは間違いと謙虚に認める姿勢はすばらしいと思う。私もこういう謙虚さを見習わないと。私は書籍の翻訳を経験したことはないが(ビジネス雑誌の記事を訳し、訳者として名前を記載してもらったことはあるが)、いつの日かこういうベストセラーを訳して、印税をがっぽがっぽしてみたいものである。


スティーブ・ジョブズ Iスティーブ・ジョブズ I
ウォルター・アイザックソン 井口 耕二

スティーブ・ジョブズ II スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則 スティーブ・ジョブズ名語録 (PHP文庫) アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝 ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録

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こんなところでもイチロー

 私の子ども時代の伝記の定番と言えば、エジソン、リンカーン、ワシントン、キュリー夫人、ライト兄弟など。どちらかと言えば外国人のものが多く、日本人だったら野口英世とか青木昆陽くらいしか思い浮かばない。

 「特集:第57回学校読書調査(その1) 高学年ほど「感動」」によると、最近の伝記の定番は、私たちの時代とはずいぶん様変わりしているようである。最近の子どもたちの間では以下の伝記が人気があるらしい。

男子に人気のある伝記

  • イチロー
  • エジソン
  • 坂本龍馬
  • 織田信長
  • 野口英世

女子に人気のある伝記

  • ヘレン・ケラー
  • マザー・テレサ
  • ナイチンゲール
  • アンネ・フランク

 男女ともに 2 位以下の順位は多少異なるが、小中高いずれでも、1 位はそれぞれイチローとヘレン・ケラーらしい。伝記と言えば、歴史上の偉人が対象になるものだとばかり思っていたのだが、イチローが 1 位とは驚きだ。私たちの時代で言えば、王選手が伝記になるようなものだ。現役で、しかも 30 代という若さでありながら伝記として扱われるのは、海を渡り遠い存在になったからだろうか。こんなところでもトップを取るイチローはつくづくすごいと思う。坂本龍馬がランクインしているのは、きっと昨年の大河ドラマの影響だろう。 
 

4062712040イチロー (火の鳥人物文庫)
佐藤 健
講談社 2000-11-20

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4061475045ヘレン=ケラー自伝 (講談社火の鳥伝記文庫 (4))
ヘレン=ケラー 柳 柊二
講談社 1981-11-19

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