『怪笑小説』は怪笑というよりも・・・
ずいぶん前に買って積ん読状態だった『怪笑小説』をようやく読み終えた。東野圭吾作品は、「黒笑小説」に続いて 2 冊目。長編のミステリーが東野圭吾の真骨頂なんだろうが、最近は長編小説を読むのがどうも億劫になっているので、こういう短編集が読みやすくていい。
全体的には『黒笑小説』のほうがおもしろかったような気がするが、『あるジーサンに線香を』という作品がとても印象に残った。主人公のジーサンが、ある医者から若返りの実験台になってくれと頼まれ、20 歳くらいまで若返る話である。ただし、永遠に若返るわけではなく、一定の時間が過ぎると、再び老化が始まり、元に戻る。その若返りの様子と再び老化が始まるまでの心の動きを、ジーサンの日記という形式で描いている。おもしろいというよりも、胸がしめつけられるような、切ない話だった。
『巨人の星』のパロディ『一徹おやじ』など、ほかの 8 編もどれもおもしろく読めた。また、巻末で作者自身が各作品を解説しており、作品ができた背景などがわかって、これも楽しく読めた。短編三部作であと残すは『毒笑小説』だけになった。
怪笑小説 (集英社文庫) 集英社 1998-08 by G-Tools |
『怪笑小説』のくにしろの評価:
comments