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ところ変われば呼び名も変わる

「『広島風のお好み焼き』だとか、『広島焼き』だとか、そういうものは広島にはないですよ。広島人が普段食べているのは何の形容詞も付かないただの『お好み焼き』です」
広島出身の人の前で「広島風のお好み焼き」と言ったら、こんなことばが返ってきた。

「広島風のお好み焼き」と言われて広島出身者がむっとする気持ちは十分理解できる。だいたい「~風」という言い方は、本家や元祖でなないことを意味している。たとえば、中国で寿司が大流行し、寿司が元来日本のものであることを知らない中国人に「日本風の寿司」と言われたら、「おいおい、こっちが本家じゃ」と言いたくなる。

逆に、大阪人や関西人が「大阪(関西)風のお好み焼き」や「混ぜ焼き」のような呼び方をされたらどう感じるんだろう。私は生粋の関西人ではないので何とも思わないが、やっぱり不快感を覚えるんだろうか。

広島のお好み焼きと大阪のお好み焼きは、作り方などが若干異なるので、厳密に言うと別の食べ物と考えるべきなんだろう。だから、「ところ変われば呼び名も変わる」ではなく、「ところ変われば物が変わる」というのが正しいのかもしれない。

私が大阪に来たばかりのころ、JR 京橋駅のホームの立ち食いそば・うどん屋での出来事。
「たぬきうどんちょうだい」
私は自分の注文を伝えた。
「たぬきはそば。うどんならきつね。どっちや」
うどん屋のおばさんは半分怒っていた。
何が何だかよくわからない私は、「じゃあきつねうどん」と言い直した。

大阪では、あげをうどんに入れたものがきつねうどん。そばに入れたもがたぬきそばである。だから、たぬきうどんなるものは存在しない。私が本当に食べたかったのは、天かすが入ったうどんである。私のそれまでの認識では、天かす入りのうどんが「たぬきうどん」だった。大阪ではそれを「ハイカラうどん」と呼ぶことを知ったのはそれからしばらくしてからである。

私の生涯最大の勘違いと呼んでも差し支えがないのが「きぬかづき」だ。私が子どものころ、三重県の実家ではよく「きぬかづき」という芋を食べていた。結婚して間もないころ、久しぶりに「きぬかづき」が食べたくなって、妻に「きぬかづき」を買ってきてくれと頼んだことがある。妻がスーパーで「きぬかずき」という芋が欲しいと言ったところ、「そんな芋はない。聞いたこともない」と言われたらしい。

きぬかつぎとは、サトイモの小芋を皮のまま蒸し、その皮を剥いて食べる料理のことである。料理名であって、芋の種類ではない。後日このことを母親に話して大笑いされたことがある。「きぬかづき」という呼称は関西では本当に通じないんだろうか(きぬかづきの作り方は、「超簡単!!!!!!里芋のきぬかづき♪@COOKPAD」を参照)。

「ところ変われば呼び名も変わる」の代表選手と言えば、やっぱり肉だ。ここ関西で「肉」と言えば、デフォルトで牛肉を指す。肉じゃが、肉うどんなど、肉の前に何もつかなければ牛肉のことである。これに対して、関東における肉のデフォルトは豚だ。関東でいう「肉まん」は関西では「豚まん」と呼ばれる。牛肉ではないからだ。また、関東の肉じゃがは豚肉を使うらしいが、これをそのまま関西の店で出すのなら、「豚じゃが」と表記しないと客が暴れることになる。

ところ変われば呼び名が変わるものについてはまだまだ書きたいことがあるが、長くなるので今日はこのくらいにしておく。






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