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○○ 冥利に尽きる

「○○冥利に尽きる」と言ったとき、「○○」に入ることばとしてすぐ頭に浮かんでくるのは、「男」「女」「母親」などだ。「○○」に入る職業としてすぐに思い浮かぶのは「教師」くらしかない。そう考えると、「○○冥利に尽きる」という表現がしっくりくる職業はかなり限定されているのかもしれない。少なくとも、サラリーマンをしていたころ、私自身は「サラリーマン冥利に尽きた」と感じたことはない。

非常に難しい手術を成功させ患者やその家族から感謝される医者、すばらしい演技で人々を感動させ絶賛される俳優、大事な場面でファンの期待に応える活躍をみせた野球選手などは、この上なく「冥利に尽きた」と感じたことがあるんだろうと想像される。

この冥利ということばはよく聞くことばであるが、正確な意味を知らなかったので調べてみた。仏教から来ていることばのようだ。

冥利
〔知らず知らずの間に神仏から受ける恩恵の意〕
(一)〔それ以外のものでは決して味わうことの出来ない〕人間として最高の充足感(幸福感)。「教師―に尽きると言うべきだ/男―・女―」
(二)#〔仏教で〕よい行いの結果として受ける、現在の幸福。
(新明解国語辞典より)

私たちは普段(一)の意味で冥利を使っているが、根本的には神仏から受ける恩恵を意味するのか。そうだとすると、特殊な人じゃなくても、誰でも人間冥利に尽きることはできるってことか。

閑話休題。私の職業的な冥利について。翻訳者という仕事(産業翻訳の業界では翻訳する人のことを「翻訳家」ではなく「翻訳者」と呼びます)は、エンドクライアントや最終の読み手の反応がわかりにくい。だから冥利を感じにくい仕事である。それでも、エンドクライアントなどの反応が間接的に翻訳者に伝えられることがないわけではない。そしてその反応がすごくよいものであると、ほんの少しだけ「翻訳者冥利」を感じることもある。誉めてもらえる機会なんてほとんどないけれど、これからもっと大きな冥利を感じられるように日々是精進。

今年もあとわずか。3 月 22 日に「景気は上向き」で、仕事が増えつつあると書いたが、その後状況は期待どおりには進展せず苦しい 1 年になった。しかし、10 月くらいからまた忙しくなり始め、最近は仕事を断らなければならないほど忙しくなってきた。まだぬか喜びはできないが、翻訳業界に限って言えば、今度こそ底を脱したと信じたい。多少厳しい 1 年ではあったが、それでも仕事がゼロになることなく、どうにかこうにか持ちこたえてこれたのは、知らず知らずの間に神仏から受けている恩恵のおかげ。だから私も十分に冥利を享受しているってことだ。感謝多謝。

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