風と共に去ったものは
先日、新・午前十時の映画祭で『風と共に去りぬ』を観てきた。子どものころから何度も観たことがある映画でありDVDも持っているのだが、映画館の大スクリーンで観るのはおそらくこれが初めて。私の中で確実にベスト5に入る大好きな映画である。
これまで、風と共に去ったものは何かなどということは考えたこともなかったのだが、冒頭のナレーションで「古きよき南部は風と共に去った」というフレーズがあり、風と共に去ったものは古きよき南部であることを初めて知った(気付いた)。古きよき南部とは南北戦争が始まる前の米国南部であり、ジョージア州のタラという土地(架空の地名らしい)を舞台に壮大なドラマが繰り広げられる。
映画のヒロインはヴィヴィアン・リー演じるスカーレット・オハラ。とびきりの美人だか、生き残る(金の)ためなら、他人にどう思われようがどんなことでもやるという勝気で気性の洗い女性。南北戦争に負け、両親も財産も何もかも失くしたスカーレットが 前半のラストシーンで畑から引き抜いた大根(ラディッシュ)にかじりつき、「二度と飢えに泣かない」と神に誓うシーンは圧巻である。この場面は何度観てもゾクゾクする。
神よ お聞き下さい
この試練に私は負けません
家族に二度と ひもじい思いはさせません 生き抜いてみせます!
たとえ盗みをし 人を殺してもでも!
神よ 誓います 二度と飢えに泣きません!
(上記のシーンは、1分22秒あたりから)
この映画にはもうひとり重要な女性が登場する。メラニーだ。スカーレットとは対照的に、誰に対しても優しく、常に他人に気遣い、気高いマリア様のような女性。そばにいてほしいと思うのはたぶんメラニーのような女性なんだろうけど、スカーレットには何とも言えないかわいらしさと人間としての魅力と力強さがある。
風と共に去ったのは古きよき南部だと書いたが、これまで風と共にった去ったのは何も古きよき南部に限ったことではない。日本で言えば、古きよき明治も、古きよき大正も、古きよき昭和も風とともに過ぎ去った。そして今、のちの時代に「古きよき平成」と呼ばれるかもしれない時代も風と共に過ぎ去りつつある。どんな時代も風と共に去っていくのだ。そして、時代の変化に対応し生き残っていくためには、スカーレットの力強さとメラニーの優しさの両方が必要なのかもしれない。
閑話休題。映画は、苦境に立たされたスカーレットが、あの有名な「Tomorrow is another day」という台詞を何とも希望に満ち溢れた声色と表情で言うシーンで終わる。そのあと、壮大なタラのテーマが鳴り響いてエンディングロールへと続く。
『風と共に去りぬ』は4時間弱という長さを感じさせない。おもしろすぎてあっという間に時間が過ぎて行く。こんなに壮大でワクワクする映画が作られたのが、85年も前の1939年というのだから驚きだ。それにしてもスカーレット・オハラは美しかった。また大スクリーンでスカーレットに会える日が来ますように。
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