かわいくなくない?
先日テレビで『踊る!さんま御殿!!』を見ていたときのこと。AKB 48 の何とかいう女の子(名前はわからない)がトーク中に「かわいくなくない?」というフレーズを使っていた。さんまさんが、「『かわいくなくない?』って『かわいいよね』っていう意味やんなあ」と聞く。私も「~なくない」は「ない」と「ない」の二重否定で肯定になるのだと思っていた。ところが、AKB 48 のその女の子によると、「かわいくなくない?」は「かわいくないよね」という意味になるとのことだった。
説明を聞いて、なるほどと思った。「~ない?」という表現は、断定を避けて相手の同意を求めるときに使う。たとえば、ある商品が、その品質や量にしては高いと思ったときに、「これって高くない?」と言う。「高い」と断定するのではなく、「私は高いと思うけど、どう思う?」と相手の意見を求める表現だ。そうすると、「高くないと思うんだけど、どう思う?」とか「高くないよね」という気持ちを表したいときは「高くなくない?」になる。この「なくない?」という表現、最近の若者ことばの中では、珍しく理論的におかしくなくない?
「~なくない?」の意味と使い方を理解して、すっかり悦に入っていたのだが、よく考えてみると、私には「~なくない?」などというフレーズを使う人と会話する機会がない。また、自分がそんなフレーズを発したら、変な目で見られるに違いない。だから、「~なくない?」を理解して使えるようになっても、何の意味もないことに気付いた。いや、それ以前の問題として、「~なくない?」どころか「~ない?」すら使ったことがない。
たとえば、「これって、高くない?」をおじさん用の関西弁に変換すると、「これ、高いんとちゃうん」といったあたりになると思われる。そうすると、「これって、高くなくない?」は、「これ、高ないんとちゃうん」あたりだろうか。少なくとも私には「~ない?」や「なくなくない?」よりも、こっちのほうがしっくりくる。関東のおじさんたちは、「高くない?」や「高くなくない?」をどう表現しているのか興味津々。まさか、そのまま「高くない?」「高くなくない?」ではないですよね。
ことばの勘違いと言えば、今日の昼食時におもしろい場面に遭遇した。松屋で、あるおじさんが店員に食券を渡していた。
「牛めし弁当 1 つですね」と店員が確認する。
「違う違う。牛めし弁当やない。食券間違えて買うてしもたんや。ほんまは牛丼弁当が欲しいんや」
そのおじさんは、牛めしと牛丼は別物だと思っているらしい。
「松屋では、牛丼のことを牛めしと呼んでるんです」
店員に、「牛めし」と「牛丼」は同じものであることを何度も説明されて、ようやく理解していた様子だった。このおじさんの気持ちもわからないではない。「牛丼」は一般名詞であり、「牛めし」は松屋の商品名。いわば固有名詞みたいなものだ。勘違いしても仕方がない。
ところで、松屋の牛めし(並)は、全国的には 320 円らしいが、近畿地方では常時 250 円である。いくらなんでも、250 円は安すぎるような気がする。景気がよくなって、デフレスパリラルから脱却し、松屋の牛めしが 350 円から 400 円くらいで売られる世の中に 1 日でも早くなることを願う。
comments
知り合いのアメリカ人が来日の際に空港で近くにいた人が
「~何々ちゃうんちゃうの」という関西弁を話しているのを聞いてこれは否定文か二重否定の肯定文かはたまた疑問文なのか全くわからずパニックになったと言っておりました。その人は大学で日本語をかなり勉強し日本語講座などで勉強して自信満々で日本に来たそうですが、いきなり空港で意味不明なったので自信が木っ端微塵になったと言っていました。
Teruo さん、コメントありがとうございます。「なくない?」にしても「ちゃうんちゃうの」にしても、日本人でもわからない人がいるくらいなんだから、アメリカ人にはなおさら難しいでしょうね。そうですね、関西弁には「~なくない?」に匹敵するすばらしい表現「ちゃうんちゃう(ん)」がありましたね。「チャウチャウ(中国の犬)じゃないんじゃない?」を関西弁で言うと「チャウチャウとちゃうんちゃう(ん)?」となるのはあまりにも有名ですよね。