『世界に一つだけの花』に突っ込みを入れてみる
スマップの『世界に一つだけの花』について書いてみる。槇原敬之の作詞作曲による大ヒット曲だ。初めて聴いたとき、相田みつをっぽくていい歌詞だなあと思ったのだが、じっくり聴くと、理論的におかしな歌詞なのである。
この歌では、花と人間を比べている。花はお互いを比べることなく、それぞれが誇らしげに胸を張っている。それに対して、人間はお互いを比べていちばんになりたがる。もともと only one の存在なんだから、花のように胸を張って生きよう。だいたいこんな趣旨だ。
とってもいいメッセージだし、そのとおりだと思う。しかし、この歌詞、花と人間の比べ方がおかしい。『世界に一つだけの花』はこんな歌詞で始まる。
花屋の店先に並んだ いろんな花を見ていた
人それぞれ 好みはあるけれど どれもみんな きれいだね
ここで言う、いろんな花とは、薔薇だとかスミレだとかパンジーだとか、花の種類のことを言っているのであって、個々の花のことを指しているのではない。つまり、「薔薇には薔薇の美しさがあり、菊には菊の美しさがある。だから、薔薇と菊を比較することはできない。どっちもきれいだ」と言っている。
人間にたとえるなら、「地球上には、いろんな人種や民族が住んでる。人によって好みはあるだろうが、どの人種も民族もすてきだね」ということになる。
つまり、『世界に一つだけの花』のおかしいところは、花の場合は種類について、そして人間の場合は個について言っているところである。個々の人間が only one だと言うのであれば、花も個について言わないといけない。「同じ種類の薔薇でも、色鮮やかで人目を引くものもあれば、しおれて枯れかけのものもある。でも、どれもきれいだね」と言わないといけない。
屁理屈はこれくらいにしといたほうがいいかな。いろいろ突っ込んだが、本当はこの曲とっても好きなんです。槇原敬之は独特の世界観を持っていて、彼の歌う『世界に一つだけの花』はぐぐっときて、かなりいいと思う。