Diary 9246 :: That's 談 top > 社会 > パソコン要らないやつ

パソコン要らないやつ

 やるべきことを次から次へとこなしているのに、私の「やること」リストはいつまでたってもきれいにならない。厳密に言うと、「やること」リストの項目は、「やりたいこと」と「やらなければならないこと」に分かれる。「やりたいこと」は放っておいてもやるので、リストにいつまでも残るのは、当然「やらなければならないこと」ばかりになる。

 早いもので、今年もあとわずかであわただしい年末がやってくる。この時期の「やること」リストの項目で、最もやっかいなものが年賀状書き。以前は、私の年末の「やること」リストにも「年賀状」の文字がいつまでも残っていたのだが、数年前に年賀状を書くのをやめることに決めてからは、その重圧から完全に開放された。一度書くのをやめてしまうと、再びあの重圧を味わうのはもうゴメンだと思う。「今年は久しぶりに会いたいですね」みたいな白々しいコメントを書くのが嫌になったことも年賀状を書くのをやめた理由の 1 つである。

 「『新年おめでとう』はNG? 震災で年賀状に異変‎(日本経済新聞)」によると、東日本大震災の影響を受けて、「おめでとう」や「謹賀新年」といった文言を使っていいものかと悩む人が増えているという。しかし、「おめでとう」や「謹賀新年」は決まり文句みたいなものなんだし、そこまで気にする必要があるんだろうか。被災していない人に出すのであれば、別に問題はないと思う。今回の震災で被災した知り合いに出すのであれば、同じデザインのものに、ねぎらいのことばを書き加えればいいのではないだろうか。

 年賀状といえば、最近気になるのが EPSON の Colorio Me の CM 。この CM で黒木メイサさんは、「これお土産。パソコン要らないやつで~す」と言っている。私は最初、「パソコン要らないやつ」は「要らなくなったパソコン」という意味だと思っていた。要らなくなったパソコンを娘が母親に持ってきたんだと思っていたのだが、「パソコンを必要としないプリンター」という意味であることが判明。「パソコン要らないやつ」は「不要なパソコン」と「パソコンを必要としないやつ(プリンター)」の 2 とおりに解釈できる。もちろん、目くじらを立てるほどのことではないのだが、こういう些細なことが気になる。きっと職業病だ。

 Colorio を使うと、印刷業者に頼んだようなきれいな年賀状ができあがるようである。年賀状を出さない私にそんなことを言う資格はないのかもしれないが、そこまできれいなものができるのであれば手作りする必要があるんだろうか。プリントごっこのような、手作り感が漂うものであればある程度意味があると思うのだが。








trackbacks

当サイトでは、当該記事への言及リンクのないトラックバックは受け付けていません。 この記事にトラックバックをする場合は、トラックバック元の記事に当記事へのリンクを貼ってください。

trackbackURL:

comments

はじめまして。
私も、「パソコン要らないやつ」は気になっていました。意味の誤解はなかったものの、「やつ」という言葉がどうもひっかかります。乱暴で、楽な言葉ですよね。
小学生の娘に、「やつ」を本来の言葉に言い換えて話しなさいと言っているのですが、苦戦しています。
綺麗な言葉って難しいです。

  • 匿名
  • 2011年11月22日 00:30

匿名さん、コメントありがとうございます。

私は「やつ」はそれほど気になりません。「そこの黒いのをください」とか「このおいしそうなのは何ですか」のように(関西弁だと、「黒いん」とか「黒いのん」とも言います)、物の名前がわからないときや、その物の名前を言うことを避けるときは、一般的には準体助詞の「の」を使いますよね。「やつ」を準体助詞の「の」に変えると丁寧な言い方になると思いますが、「パソコン要らないの」はちょっとわかりにくいような気もします。人のことを「やつ」と呼ぶのは乱暴だと思いますが、場合によっては、物を準体助詞的な用法で「やつ」と呼んでも、それほど乱暴(下品)ではないと思います。「パソコン要らないやつ」を準体助詞「の」を使ったわかりやすい言い方に変えることができればいいのですが、ちょっと思いつきません。

  • くにしろ Author Profile Page
  • 2011年11月22日 09:09

「やつ」と「の」のことが気になったので、翻訳コラム 45: 「やつ」と準体助詞の「の」で、「やつ」と準体助詞「の」について考察してみました。

  • くにしろ Author Profile Page
  • 2011年11月24日 10:33

一番最初にコメントを書いた者です。詳しい内容をありがとうございます。
まず、言葉のお仕事をされているくにしろさんも「やつ」が気になっていらっしゃらないことが意外でした。私が気にしすぎだったかなと。娘に厳しくしすぎたと反省していたところでした。
でも、例えば店員が客に「やつ」を使うと、やはり丁寧さに欠けるように思います。それから、なぜか男の子が使うことには抵抗がないのです。
「やつ」は「もの(物)」や「こと(事)」と言い換えられることもできますね。
あのCMの娘が母に言うセリフとしては、不自然かも。

  • 匿名
  • 2011年11月24日 14:48

特定のことば使いが気になるか気にならないかは、人によって異なるので、どちらが正しいとは一概に言えないと思います。ただし、店員が客に対して「やつ」を使うのは、あまり好ましくないと私も思います。「やつ」は確かに「もの」や「こと」を指しますが、たいていの場合は、「もの」や「こと」に置き換えることはできないと思います(「パソコン要らないものです」は変です)。一般的には、「の」に置き換えればいいのではないでしょうか。しかし、単純に「の」で置き換えると奇妙に感じるこの CM のようなケースでは、「パソコン要らないプリンターです」のように、具体的なものの名称を言うかないような気がします。

  • くにしろ Author Profile Page
  • 2011年11月25日 11:58

N.Y.Cityと申します。

いまさらですが、気になる記事だったのでコメントします。

この例でいう「やつ」は、対象を擬人化して表現しているように感じるのですが、そういう解釈ではおかしいでしょうか?

N.Y.City さん、コメントありがとうございます。ここで使われている「やつ」は擬人化ではなく、黒い「やつ」とかネバネバした「やつ」の「やつ」と同じで、準体助詞の「の」に準ずる用法と解釈するのが自然だと思います。

  • くにしろ Author Profile Page
  • 2013年1月11日 09:47

はじめまして、
Translation Room 9246 コラム 45を拝見しました。

「パソコン要らないやつです」を準体助詞「の」を使って、意味が正しく伝わるように上品に言い換えることはできないのでしょうか。 
「これお土産。パソコン要らないタイプ~」
「これお土産。パソコンの要らないタイプ~」
「これお土産。パソコンの要らないほう~」
「これお土産。パソコンの必要ないほう~」
では日本語として間違いでしょうか。

  • 翻訳
  • 2017年8月 3日 16:17

翻訳さん、コメントをいただいていたことに気付くのおそくなってしまい申し訳ありません。

「パソコン要らないタイプ~」などは日本語としてまったくおかしくないですし、意味も正しく伝わっていると思います。ただ、私が知りたかったのは、「パソコン要らないやつです」の「やつ」を準体助詞の「の」を使って、正しく意味が伝わるように書き換えできないかというkとでした。

  • くにしろ Author Profile Page
  • 2017年10月 2日 10:13

comment form

(Diary 9246 :: That's 談 にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)