蛍見物はいとをかし
ここ川西を流れる猪名川では、昨年あたりから蛍を呼び戻す町興しプロジェクトを実施している。蛍を呼び戻すなんてそんなに簡単なことではないんだろうと思っていたら、先日散歩の際に、蛍が帰ってきたことを伝える看板を見つけた。また、市の Facebook でも乱舞している蛍の写真が紹介されていた。そういうことなら一度見てみたいと思った。
蛍が出現しやすい時間帯は 20 時から 21 時の間とのこと。19 時過ぎに仕事を終え、猪名川に向かった。途中スーパーに寄ってビールとつまみを買う。すぐに蛍が見られるとは限らないので、ビールでも飲みながらのんびり待とうと思ったのだ。
猪名川の蛍出現場所に到着したのは、19 時 40 分ごろ。すでに 10 人以上の人が蛍見物に来ていた。川べりに腰を下ろしてビールを飲む。ビールなんか飲んでる不謹慎者は私くらいしかいない。ぼんやり川面を眺めていると草むらの中に蛍の青白い光を発見。しばらくすると、目の前を 1 匹の蛍が蛇行しながら浮遊する。ビールを飲み干して再度草むらを見ると、先ほどは 2~3匹だったのに、10匹以上の蛍が光っている。よく見ると、蛍は一定の明るさで光るのではなく、明るくなったり暗くなったりしている。
蛍がここにいますと点滅し 国城 鶏侍
(ほうたるが ここにいますと てんめつし)
さらに観察すると、蛍は一定の間隔で点滅するのではなく、しばらく光らない状態が続いてから、点滅を開始することがわかった。そうか、蛍は力を貯めて光るのか。
蛍が力を貯めて光けり 国城 鶏侍
(ほうたるが ちからをためて ひかりけり)
蛍は人間をあまり怖がっていないように見える。事実、子どもが簡単に捕獲していた。蛍のことを詠んだ句にこんなのがある。
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子
今目の前で光っている蛍たちは、この世に戻ってくるときに、本当にじゃんけんで負けた元人間なのかもしれないなどと思ったりした。精一杯光って、何かメッセージを伝えようとしているようにも見える。蛍を最後に見たのは小学生のとき。実家の近くの川で乱舞する蛍を見た時以来だった。幻想的というほどではなかったが、それなりに風情のある光景だった。久しぶり蛍を肉眼で見られて、ハッピーな 1 日だった。じゃんけんに勝って人間として生まれてきたんだから、また明日から人間として精一杯がんばります。