しんむつ会
派遣社員として働く妻は、派遣先の会社の「しんむつ会」なるものに定期的に出席している。どういう活動を行っているのかはよくわからないが、社内の数人のメンバーで作った、ちょっとしたお遊びのような会なんだろう。そう思っていた。
「明日また『しんむつ会』あるから、帰り遅くなる」と妻が言う。
「おお、わかった。何か適当に食べとく」と答えた私は、以前から疑問に思っていたことを聞いてみた。
「ところで、『しんむつ会』って何?どんな字書くの」
「『親』しいっていう字に陸みたい字の『むつ』っていう字あるやん。それ」
「ひょっとして、これか」
紙に「親睦会」と書いて、妻に見せた。
「うん。それそれ」
「これなあ、『しんぼく会』って読むんやで」
睦月(むつき = 陰暦正月)や「睦まじい」など、睦という字は確かに「むつ」と読む。だから、「しんむつ会」と読みたくなる気持ちはわからないでもない。いつも「親睦会のお知らせ」が回覧されるが、その読み方が話題になったことはないという。「しんむつ会」の正体が親睦会だったとは・・・。
これまでに、「えっ、そんな読み方するか」と思った中で、いちばんおもしろかったのが、とある友人が言った「むらさこい」だ。何のことかと思ったら、居酒屋の「村さ来」(むらさき)のことだった。でも、「村さ来い」っていう店名はそれほど悪くないと思う。田舎っぽい料理で素朴なスタッフがおもてなしをする店というイメージを与える。いっそのこと、「村さ来い」に改名したらどうだろう。
かくいう私も人のことを笑えない。「迎春」という字を30 代半ばまでずっと「ぎょうしゅん」と読んでいた。間違いを指摘されて恥ずかしい思いをしたことがある。迎という字は「げい」と読み、「ぎょう」とは読まないことは十分に認識してたのだが・・・。日常的に使わないようなことばは、勘違いにずっと気づかないまま年を取るってことは誰にでもある。他人の恥ずかしい勘違いは笑えるけど、自分が恥ずかしい思いをするのはやっぱり嫌なんだなあ。
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