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オレヤ様から電話

 私は身内の者に電話するのがあまり好きではない。他人に電話する場合は、まず「くにしろです」と名乗ればいいのだが、身内が相手だと何と言っていいのかわからないからだ。いちいち名乗らなくても、声とか話し方で認識してもらえだろうと思って、きなり用件を話し出すこともあるが、しばらくして「なんやあんたか」などと言われる。そういうわけで、仕方なく「オレや」とか「オレオレ」とか言ってしまことが多い。

 よく考えてみると、電話で「オレ」と名乗ることには何の意味もない。「声と喋り方から誰なのか認識してください」という音声信号としての役割を果たしているに過ぎない。しかし、おれおれ詐欺なるものが成立するくらいだから、世の男性の多くが私と同じように「オレや」とか「オレだけど」と言っているのだろう。

 会社勤めをしていたころ、新人の女性社員が「くにしろさ~ん。オレヤ様から電話で~す」と私宛の電話を取り次いでくれたことがあった。電話に出てみるとそれは社長だった。あとで電話を取り次いでくれた女性に事情を聞いてみると、「電話に出たら、いきなり名前も名乗らずに『くにしろ君おるか』と言われたので、『どちら様ですか』と聞いたら『オレヤ』と返ってきた」そうである。

 ある程度の期間働いている社員だったら、声や喋り方からそれが社長だとすぐに認識できるので、社長に「どちら様ですか」と聞くようなことはない。社員に「どちら様ですか」と聞かれることがめったにない社長も、予期せずにそう聞かれてとっさに「オレや」と答えてしまったんだろう。

 身内の者に電話するとき、多くの男性が「おれや」とか「おれおれ」と言うのを利用したのがおれおれ詐欺であるが、これには女性版もあるんだろうか?「わたしわたし」と言って、娘や孫を装って金をだまし取ったというニュースは聞いたことがない。それとも、そもそも女性は電話で第一声に「わたし」などと言わないんだろうか。どうでもいいことだけど、ちょっとした疑問。

今日から秋と言われても

 今日は立秋。よく「暦の上では秋」などと言う。今日からは暦の上では秋であり、実際に立秋以降の暑さは残暑と呼ばれる。しかし、気温を基準に考えると 1 年でいちばん暑い月は 8 月であり、これまで 8 月が秋だなどと思ったことはない。「今日から秋と言われても」という感じである。

 ところが、俳句をやるようになってからは、暦上の季節をはっきりと意識するようになった。俳句の世界では、今日以降は明確に秋なのである。もう夏の句は詠めない。しかし、暦(俳句)の季節と現実的な季節感との間にはなぜ 1 カ月もずれがあるのだろうか。このことをずっと不思議に思っていたのだが、最近自分なりの答えが出たので、そのことについて書いてみたい。

 たぶん『失楽園』だったと思うが、たしか「夏が終わって秋が来るのではなく、夏のうちから秋の準備は始まっている」みたいな台詞があった。つまり、立春、立夏、立秋、立冬といいった暦上の季節の変わり目は、それぞれ前の季節がピークに達する日なのではないだろうか。たとえば、立秋は夏がピークに達する日。夏がピークに達し、今日を堺に夏は徐々に衰えていく。『失楽園』風に言うなら、秋の準備が始まる日だと捉えてもよい。今日から約 90 日をかけて秋がピークに達していく。つまり、1 日に 1.1% ずつ秋が進行していくことになる。

 立秋の今日は秋の要素 1.1% と夏の要素 98.9% で構成されている。これで、秋の気配を感じろと言っても無理な話である。これが 47 日後の秋分になると、秋の要素が 51.7%、夏の要素が 48.3% という比率になる。「暑さ寒さも彼岸まで」というが、確かに秋の要素と夏の要素の比率が逆転している。本格的に秋の気配が感じられるようになるのがこのころである。

 気温を基準に区分したものが現実的な季節であるとすれば、それぞれの季節の準備が始まってから完了するまでの期間を基準に区分したものが暦の季節なのかもしれない。そして、ほとんど夏の要素で占められた 8 月の日々の中に、1 日 1.1% ずつ増えていく秋の要素を発見し、感じ、観察していくことができれば、とても楽しいことのような気がする。残暑厳しい 8 月に、これからいくつの「小さい秋」を見つけられるか、楽しみである。

 くにしろの拙句は「ハイ!句にしろ!」で公開しています。よろしければ、覗いてみてくださいまし。

今度は大腸カメラ

 大腸カメラの検査が始まって 1 分も経っていなかった。
「あっ。ポリープありますね。くにしろさん、検査やっといてよかったです。これが見つかっただけでも、検査をやった甲斐がありました」
先生は興奮気味だったが、私はそれどころではなかった。とにかく痛くて苦しい。早くこの苦しさから開放されたかった。

 エントリー「胃カメラ初体験」で書いたように、念のため、安心のために大腸カメラの検査を受けたのが一昨日のこと。きっかけとなったのは、胃の不具合だったので、大腸に関してはそれほど心配していなかった。何も異常が発見されずに、その日のうちに帰ることを想定していた私としては「一泊入院していってください」と言われて、少し面食らっていた。

 大腸カメラの検査を受けた感想は、とにかく大変だということである。1 日前から準備が始まる。朝からエニマクリンという検査食を食べ、21 時に下剤を飲む。下剤が効きやすい私は、その晩と翌朝、何回もトイレに駆け込んで、疲れ果ててしまった。検査当日は 8:30 分に入院し、再度 1.8 リットルの下剤を飲まされる。再度何度もトイレに駆け込む。午後 1 時に検査開始。想像以上に苦してく痛い検査だった。

大腸カメラ用の検査食エニマクリン

 検査後、先生の説明を聞く。「検査をやっといてよかった」と何度も言われ、今後定期的に検査を受けるように言われる。2 ~ 3 年に 1 回でいいのだろうと思っていたのだが、毎年受ける必要があるとのこと。1 日前からの準備を含め、毎年こんなに苦しいことをやらないといけなのかと思うと、気が重くなる。1 年後にまた同じことをやるのかと思うと、ぞっとする。

 先生も妻も、早期に処置ができてよかったと喜んでいる中、私一人が素直に喜べなかった。しかし、冷静に考えてみると、今回胃の具合が悪くならなければ、大腸の検査を受けることはなかったわけで、検査嫌いの私が何も不具合がないのに今後積極的に検査を受けるとは思われない。5 年後、10 年後に大変なことになっていたかも。今回胃の具合が悪くなったことに感謝しないといけないのかもしれない。

 一泊入院して、翌朝止血剤の点滴をする。腸から出血がないことを確認して昼前に退院。 2 日ぶりに食べた、お粥以外の食事が美味かった。午後から 1.5 日分の遅れを取り戻すべく、仕事を開始。文句を言いながらでも、こうやって普段どおりに仕事ができることがどれだけすばらしいことか。わずか一泊の入院だったが、やっぱりわが家はいい。

 先生や看護師さんや、その他心配してくれたいろんな人に感謝感謝。 

今年の夏はサーキュレーターとハムステーキ

 生協に注文しておいたサーキュレーターが届いた。サーキュレーターというものは、エアコンと併用することを前提としたものだと思っていたのだが、単独で使っても十分効果があることを知り、急に欲しくなったのだ。

 エアコンと併用しない場合は、窓を開けて外に向けて送風するとよいらしい。室内の空気を外に送ることで、外気を取り入れることができるとのこと。さっそくやってみたのだが、効果があるのかないのか微妙な感じだった。昼間だったので外気が熱過ぎてあまり涼しくなかったのかもしれない。ということで、夜になって外気が十分に冷たくなったであろうころを見計らって再度試してみた。

サーキュレーター

 もちろん、エアコンをつけている時のような涼しさではないが、時おり冷たい風が吹き込んできて気持ちがいい。熱帯夜でなければ効果的かもしれない。今夜がエアコン無しで寝られるかどうかは、きわどいところであるが、エアコンと併用した場合のサーキュレータの効果も試してみたいところである。

 最近の食べ物のマイブームはハムステーキ。胃カメラの検査が終わったあと、テレビで「ハム」という単語を聞いたことをきっかけに、ハムステーキが無性に食べたくなった。妻に頼んで買ってきてもらったのだが、肉とはまた違った旨さがあって、やみつきになってしまった。先週の週末に続き、昨晩もハムステーキ。

ハムステーキ

 サーキュレーターとハムステーキのマイブームはしばらく続きそうだ。

『平清盛』がますますおもしろくなってきた

 祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。 

 これは、平家物語の冒頭部分。あまり評判がよくなく視聴率も低い『平清盛』だが、私は第 1 回から欠かさず見ている。確かに、前半ではマンガチックなところがあったり、『パイレーツ・オブ・カリビア』っぽい演出があったりと、突っ込みどころ満載だったが、ここ数回の放送は歴史の大きな変化が描かれ、ゾクゾクするほどおもしろい。

 今回の大河ドラマ『平清盛』にはちょっとした思い入れがある。平氏発祥の地である伊勢地方は私が生まれ育った土地であり(ここで言う「伊勢」とは、三重県伊勢市のことではなく、現在の三重県津市を中心とした地域を指す)、現在住んでいる兵庫県川西市は聖和源氏発祥の地である(川西市では、毎年 4 月に源氏まつりが開催される。詳細は、エントリー「源氏まつりはいとをかし」を参照)。ちょっと大げさかもしれないけど、平氏と源氏の発祥の土地の両方に関わりがある人間として、『平清盛』を観ないわけにはいかない。

 特別な思い入れがあるもう 1 つの理由は、生まれて初めて観た大河ドラマが『新・平家物語』だったこと。小学 6 年のときだった。6 年生では歴史を習うので、興味を持って一生懸命観ていた記憶がある。平清盛役を演じていたのが仲代達矢氏。誰が演じていたのかは覚えていないが源義朝が馬に乗って暗闇を駆けていくシーンと、清盛が高熱に苦しむシーンを今でも覚えている。 『平清盛』の放送が決定したときから、40 年ぶりに平家の物語が観られることを楽しみにしていた。

 今週の放送ではついに義朝が死んでしまい、大きな転換期を迎える。清盛は、常盤御前とその息子牛若を助け、首をはねると決めていた頼朝に「殺せ、殺せ」と言われて、心変わりしてしまう。歴史に明るくない私は、清盛と頼朝の間に本当にあのようなやり取りがあったのかどうかは知らないが、このとき頼朝と牛若(義経)を助けていなければ、歴史は変わっていたんだろうか。

 今後は、「驕る平家は久しからず」のことばどおり、隆盛を極めた平家の没落が描かれることになる。諸行無常(この世のあらゆるものはすべて移ろい行く)をテーマにした平家の物語の世界は、何とも壮大な絵巻物語という感じがして大好きだ。今後『平清盛』からますます目が離せない。

 YouTube で平家物語の朗読を発見したので、ここに貼っておく。

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