今日から秋と言われても
今日は立秋。よく「暦の上では秋」などと言う。今日からは暦の上では秋であり、実際に立秋以降の暑さは残暑と呼ばれる。しかし、気温を基準に考えると 1 年でいちばん暑い月は 8 月であり、これまで 8 月が秋だなどと思ったことはない。「今日から秋と言われても」という感じである。
ところが、俳句をやるようになってからは、暦上の季節をはっきりと意識するようになった。俳句の世界では、今日以降は明確に秋なのである。もう夏の句は詠めない。しかし、暦(俳句)の季節と現実的な季節感との間にはなぜ 1 カ月もずれがあるのだろうか。このことをずっと不思議に思っていたのだが、最近自分なりの答えが出たので、そのことについて書いてみたい。
たぶん『失楽園』だったと思うが、たしか「夏が終わって秋が来るのではなく、夏のうちから秋の準備は始まっている」みたいな台詞があった。つまり、立春、立夏、立秋、立冬といいった暦上の季節の変わり目は、それぞれ前の季節がピークに達する日なのではないだろうか。たとえば、立秋は夏がピークに達する日。夏がピークに達し、今日を堺に夏は徐々に衰えていく。『失楽園』風に言うなら、秋の準備が始まる日だと捉えてもよい。今日から約 90 日をかけて秋がピークに達していく。つまり、1 日に 1.1% ずつ秋が進行していくことになる。
立秋の今日は秋の要素 1.1% と夏の要素 98.9% で構成されている。これで、秋の気配を感じろと言っても無理な話である。これが 47 日後の秋分になると、秋の要素が 51.7%、夏の要素が 48.3% という比率になる。「暑さ寒さも彼岸まで」というが、確かに秋の要素と夏の要素の比率が逆転している。本格的に秋の気配が感じられるようになるのがこのころである。
気温を基準に区分したものが現実的な季節であるとすれば、それぞれの季節の準備が始まってから完了するまでの期間を基準に区分したものが暦の季節なのかもしれない。そして、ほとんど夏の要素で占められた 8 月の日々の中に、1 日 1.1% ずつ増えていく秋の要素を発見し、感じ、観察していくことができれば、とても楽しいことのような気がする。残暑厳しい 8 月に、これからいくつの「小さい秋」を見つけられるか、楽しみである。
くにしろの拙句は「ハイ!句にしろ!」で公開しています。よろしければ、覗いてみてくださいまし。
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