あんたなあ、ぼうっとしてたらあかんで
最近、木村カエラのキシリッシュの CM が気持ち悪いという意見を Web 上でちらほらと目にする。彼女がしゃべる関西弁が気持ち悪いというのである(「木村カエラCMのエセ関西弁が気持ち悪い理由」を参照)。この CM だ。
この CM、私は気持ち悪いどころか、どちらかと言うと好きだ。この CM で彼女が使う関西弁は確かにエセ関西弁だし、これが気持ち悪いという人たちの気持ちもわからないではない。しかし、その変な関西弁こそがこの CM の意図だと私は解釈している。この CM で木村カエラが演じているのは「キシリッシュ ガム星人カエラ」というキャラである。それならば、むしろ流暢な関西弁をしゃべるほうが不自然だ。関西弁が最も似合いそうにない木村カエラが、とってつけたような関西弁をしゃべっているところにおもしろさがあり、CM としてはよくできていると思う。
木村カエラの関西弁が変だと言っても、それは非関西弁ネイティブの俳優・女優が映画やドラマなどでしゃべる変な関西弁と同程度であり、おそらく非関西弁ネイティブの人たちには、気付かない程度のレベルだと思う。この CM の関西弁を問題視するのであれば、関西を舞台にした映画やドラマを台無しにしている、大物俳優・女優がしゃべる変な関西弁のほうをもっと問題視すべきだと思う。せっかくの名場面で、変てこりんな抑揚で「あほなこと言わんといて」などと言われると、それこそずっこけそうになる。
映画で使われる不自然な方言が気持ち悪いと感じるのはもちろん関西弁に限ったことではないだろう。たとえば、福岡を舞台にした映画で、変な博多弁が使われていたら、福岡の人たちははきっと気持ち悪いと思う。しかし、私にはその博多弁が変であることは分からないので、逆に映画を純粋に楽しむことができる。関西を舞台にした映画やドラマほかの地方よりも断然多い。ということは、ことばが気になって、映画を 100% 楽しめないという思いをいちばんしているのは関西人なのかもしれない。