おらは死んじまっただァ
予定していたよりも仕事が早く終ったため、先日図書館で借りてきた『昭和レトロ語辞典』を手に取り、興味のある項目を読んでみる。タイトルは辞典となっているが、昭和 30 年から 42 年の間に流行したことばとその背景について解説した読み物である。
昭和レトロ語辞典 清野 恵美子 講談社 2007-02-07 by G-Tools |
私が生まれた年は昭和 35 年である。昭和 30 ~ 38 年ごろまでの事象は、知識としては知ってはいるが、リアルタイムで体験したわけでない。かろうじて、何となく覚えているかなというのが昭和 38 年ごろからである。『昭和レトロ語辞典』に紹介されている流行語の中で、実体験として強烈に印象に残っているものが 2 つあった。
まずは昭和 38 年に流行したという「シェー」。これは赤塚不二夫の代表作『おそ松くん』から生まれた流行語。漫画の登場人物のひとりであるイヤミは、おフランス帰りを鼻にかけたいやみなやつで、びっくりすると独特のポーズで「シェー」という奇声を発する。当時の子どもたちは、皆イヤミのポーズを真似て、「シェー」とやったものである。子どものときに撮った写真に、「シェー」のポーズをして写っているものがあるくらいだから相当流行したんだろう。
もう 1 つの印象に残っている流行語は「おらは死んじまっただァ」。これは、昭和 42 年に大ヒットしたフォーク・クルセダーズの『帰って来たヨッパライ』の歌い出しの部分である。当時 280 万枚売れたらしく、強烈に記憶に残っている。テープの早回しといい、ふざけた歌詞といい、奇想天外な曲だった。当時、だれもが「おらは死んじまっただァ」と口ずさんでいた。
当時はまったく知らなかったのだが、『帰ってきたヨッパライ』は歌詞の内容以外にも、遊び心がいっぱい詰まった曲だったようである。たとえば、「天国よいとこ一度はおいで」という部分は、「草津良いとこ一度はおいで」をもじった歌詞だったらしい。また、最後の僧侶の読経部分には、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ! (A Hard Day's Night)」の歌詞が盛り込まれていたり(お経風に「It's been a hard day's night」と言っている)、曲の締めくくりは、「エリーゼのために」のフェードアウトになっていたりする。フォーク・クルセダーズの偉大さを再認識した 1 日だった。
comments
こちらでコメント差し上げるのは初めてですね。よろしくお願いいたします。
A Hard Day's Night の歌詞が盛り込まれていることにはっきり気づいたのは、一昨年、加藤和彦が亡くなった後でいろいろと聞いていたときだった、と思い出しました。
私は1年後の生まれですが、やっぱり子供の頃の写真で、友だち数人と一緒に「シェー」してる写真があります。
baldhatter さん、コメントありがとうございます。以前にも、切手に関する記事でコメントをいただいたような気がします。
そう言えば、加藤和彦さん、昨年亡くなったんですよね。「あのすばらしい愛をもう一度」とか懐かしいです(おそらくリアルタイムでは聴いていないと思いますが)。「シェー」のポーズで写真撮影は全国的な現象だったのかもしれませんね。