それって本当に流行語?
今年も恒例の流行語大賞が発表された。見事大賞に輝いたのは「なでしこジャパン」とのこと。ほかに候補に挙がったことばは、「3・11」「帰宅難民」「風評被害」「絆」「こだまでしょうか」「どじょう内閣」「ラブ注入」「スマホ」「どや顔」などらしい。
以前から思っていたことなのだが、果たしてこういうことばは本当に流行語と呼べるんだろうか。流行語と聞いて私が思い浮かべるのは、「がちょ~ん」「お呼びでない」「ちょっとだけよ」「おしゃまんべ」「当たり前田のクラッカー」「どろんする」「シェー」といったことばだ。残念ながら、古いものしか思いつかなかったが、多くの国民に長期に渡って浸透し、何かにつけて使われていたことばである。
それに対して、「3・11」「帰宅難民」「風評被害」「どじょう内閣」「スマホ」などは、今年話題になったり注目を集めたりした事象であり、何かのおりにそれを口にするといった類のものではない。そういう意味で言うと、今年の候補の中で「流行語」と呼んでも差支えがなさそうなものは「ラブ注入」しかないような気がする。「ラブ注入」が、老若男女を問わず、どの世代にも広く浸透したかどうかは別として。
多様化がますます進む現代社会では、昔のように世代に関係なく誰もが知っているような流行語というのものはもう生まれないのかもしれない。最近では、世代を超えてだれもが歌えるようなヒット曲がほとんど生まれなくなったのと似ている。裏返して言えば、昔は娯楽の選択肢が少なかったため、みんなが同じものを見て同じように興じていたということである。楽しみや娯楽が多様化し、各人がそれぞれの楽しみを持てる今の時代と、どちらのほうがいいのかはよくわからないが。
今年最も印象に残った出来事や事象という意味では、「なでしこジャパン」が大賞を受賞したのは妥当だと思う。このあとの年末の恒例行事といえば今年の漢字。今年はどんな漢字が選ばれるんだろうか。今年も残りわずか。終りよければすべてよしにしたいものである。