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23年ぶりの風邪(インフルエンザ)

 「A型インフルエンザですね」と医者は言った。にわかには信じられなかった。インフルエンザにかかるなんてありえないと思った。

 喉の痛みを感じ始めたのは3日ほど前。通常なら早めに葛根湯でも飲んでおけば1日もすればすっかり治る。私は過去23年間風邪(インフルエンザ)を引いたことがなく、風邪を引かないことに関しては根拠のない自信を持っていた。妻がインフルエンザをもらって帰ってきて、高熱でうんうん唸っている横で寝ていてもびくともしなかった。喉が痛くなったり鼻が詰まったりすることはあっても、熱を出して寝込んだり医者にかかったりしたことはなかった。だから今回も何でもないと思っていた。

 ところが、3日目の朝になっても喉の痛みは引かず、若干の寒気も感じた。昼ごろには身体の節々に痛みまで感じ始めたのだが、熱を測ったところ平熱だったので、まだたかをくくっていた。なんせ私は風邪を引かない男だし、23年の実績がある。風邪なんか引くわけがない。

 夕方になり、身体がかなりしんどくなってきたので6時前に仕事を切り上げて身体を休めることにした。念のため熱を測ってみると38.5度。「病院に行って来い」と妻に言われ、しぶしぶ病院に向かう。診断結果はA型インフルエンザ。ショックだった。絶対に風邪を引かないことが自慢の1つだったのに。そして、風邪を引いていない歴23年という記録が途絶えてしまったことがとても残念である。

 その日は、処方してもらったタミフルを飲んですぐに寝た。一晩爆睡したら朝にはすっかり平熱に戻っていた。タミフルの威力は大したものだ。心配していたタミフル服用による異常行動も見られなかったようである。妻には来年は予防接種を受けるように言われたが、風邪をひかない男としてそれは受け入れがたいことである。






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